建設会社は「半年後の預金残高」を読めていますか?|利益予測を資金繰りにつなげる方法

「今期は、たぶん利益が出ると思います」
建設会社の社長と話していると、受注状況や工事の進み具合から、今期の利益についてはある程度の感覚を持っていることがあります。
ところが、もう一つ質問してみます。
「では、半年後の預金はいくら残っているでしょうか?」
ここまで聞くと、答えるのが急に難しくなります。
仕事はある。
利益も出る見込みがある。
それでも、半年後に会社のお金がいくら残っているのかは分からない。
建設会社の経営管理では、この「利益の未来」と「現金の未来」をつなぐことが重要です。
受注残から利益の着地は見えてきた
これまで、この連載では、
実現粗利
+
確保粗利
+
未確保粗利
という考え方で、必要粗利を捉えてきました。
さらに、工事台帳や受注残を使えば、
受注残
↓
工事進捗
↓
将来売上
↓
将来粗利
↓
利益着地予測
という形で、まだ決算書には表れていない未来の利益を予測できるようになります。
ここまで来ると、
「今年はどのくらいの利益で着地しそうか」
は、以前よりかなり見えるようになります。
ただし、これだけではまだ足りません。
利益が分かっても、預金残高が分かるわけではないからです。
1,000万円の粗利が出ても、先にお金が出ていくことがある
例えば、ある工事について、
- 請負金額 5,000万円
- 工事原価 4,000万円
- 見込粗利 1,000万円
だったとします。
工事としては、1,000万円の粗利が見込めます。
しかし、資金の動きを見てみると、
4月 材料・外注費を支払う
5月 工事を進める
6月 さらに外注費を支払う
7月 工事完成・請求
8月 入金
ということもあります。
つまり、
利益が出ること
と、
その間の支払いに耐えられること
は別の問題です。
しかも実際の会社では、一つの工事だけが動いているわけではありません。
複数の現場で同時に支払いが発生し、その一方で入金時期は工事ごとに異なります。
だからこそ、工事別の利益予測だけではなく、
「いつ入って、いつ出ていくのか」
を時間軸に置き直す必要があります。
工事別の入出金予定だけでも、まだ会社全体の資金繰りにはならない
ここで、工事ごとの入金予定と支払予定を整理したとします。
例えば、
A工事 5月に500万円支払、7月に800万円入金
B工事 6月に700万円支払、8月に1,000万円入金
C工事 7月に400万円支払、9月に600万円入金
といった具合です。
これだけでも、工事による資金の動きはかなり見えてきます。
しかし、会社から出ていくお金は工事原価だけではありません。
毎月の給与があります。
事務所家賃やリース料、保険料などの固定費があります。
消費税や法人税などの納税もあります。
借入金の返済もあります。
車両や重機などの設備投資を予定しているかもしれません。
そこで、
工事別の入出金予定
に、
会社全体の入出金予定
を重ねます。
「半年後の預金残高」を作ってみる
考え方は、それほど複雑ではありません。
現在の預金残高からスタートして、
+ 工事代金の入金予定
- 材料費・外注費などの工事支払予定
- 給与・一般管理費
- 税金
- 借入返済
- 設備投資
+ 新規借入など
を月ごとに並べていきます。
例えば現在の預金が3,000万円あったとしても、
4月末 2,700万円
5月末 2,200万円
6月末 1,500万円
7月末 900万円
8月末 1,800万円
9月末 2,500万円
となるかもしれません。
最終的には2,500万円まで戻ります。
年間で見れば利益も出ているかもしれません。
しかし、経営上、本当に重要なのは途中です。
7月末に900万円まで資金が減る。
この事実が、4月の時点で分かっているかどうかです。
資金繰り表は「お金がなくなってから作る表」ではない
資金繰り表というと、
「資金が苦しい会社が作るもの」
というイメージを持たれることがあります。
私は、むしろ逆だと考えています。
資金が足りなくなってから預金残高を確認しても、できることは限られます。
3か月後、半年後まで見えていれば、経営者にはまだ選択肢があります。
例えば、
請求のタイミングを見直せないか。
入金条件を相談できないか。
設備投資の時期をずらすべきではないか。
新しい大型工事を受注した場合、さらに資金負担が増えないか。
借入が必要になるのであれば、いつから準備すべきか。
こうした判断を、資金が底をつく直前ではなく、前もって考えられます。
ですから、資金繰り表の目的は、
「資金繰り表を作ること」
ではありません。
「未来の経営判断を早くすること」
です。
決算書には、半年後の預金残高は載っていない
試算表や決算書は重要です。
会社の過去から現在までの経営成績や財務状態を確認するためには欠かせません。
しかし、決算書をどれだけ詳しく見ても、
「半年後の預金はいくらになっているか」
その答えが直接載っているわけではありません。
未来を読むには、現在持っている情報を未来へつなぐ必要があります。
建設会社なら、
工事台帳
↓
受注残
↓
将来売上
↓
将来粗利
↓
利益着地予測
↓
工事別の入金・支払予定
↓
会社全体の資金繰り
↓
将来の預金残高
とつないでいく。
ここまで来て初めて、
「仕事はある」
という感覚が、
「この受注状況なら、半年後の会社のお金はこうなる」
という経営数字に変わります。
未来から逆算するだけではなく、現在から未来も予測する
Gリバースでは、これまで、
3年後にどんな会社にしたいのか。
そこから必要な人員、固定費、利益、粗利、売上を逆算する。
という考え方をお伝えしてきました。
つまり、
未来から現在へ逆算する。
一方、実際の経営では、もう一つの方向も必要です。
今ある工事、受注残、入出金予定から、
半年後の利益と資金を予測する。
つまり、
現在から未来を読む。
この二つがつながって初めて、
「3年後にこういう会社にしたい」
という計画が、現在の経営から切り離された目標ではなくなってきます。
3年後から逆算して必要な数字を考える。
そして、現在の工事から未来の数字を予測する。
その両方を毎月見比べながら、
今のまま進んで3年後へ到達できるのか
を確認していく。
私は、そこまでつながって初めて、経営に使える数字になると考えています。
最後に
これは建設業だけの話ではありません。
製造業でも、卸売業でも、サービス業でも、
利益が出ることと、お金が残ることは同じではありません。
ただ、建設業では特に、工事ごとに着工、支払い、請求、入金の時期がずれ、複数の工事が同時に進むため、その違いが大きくなりやすい。
だからこそ、
「今いくら預金があるか」
だけではなく、
「半年後にいくら預金が残る予定なのか」
まで見ておきたいのです。
そして、半年後に資金が不足すると分かったとき、初めて次の問題が出てきます。
その未来を、金融機関にどう説明するのか。
単に、
「資金が足りないので貸してください」
ではありません。
なぜ資金が必要になるのか。
受注はどのくらいあるのか。
今後どのくらい売上・粗利が見込めるのか。
いつ資金が不足し、いつ回収できるのか。
こうした会社の未来を数字で説明できることが、私は建設会社の「資金調達力」につながると考えています。
次回予告
次回は、
「銀行に何を見せれば、会社の半年後が伝わるのか」
を取り上げます。
決算書や試算表だけでは伝わりにくい建設会社の未来を、
受注残・利益着地・資金繰り
から、どのように金融機関へ説明していくのか。
「融資を受けるテクニック」ではなく、
金融機関に自社の未来を数字で説明できる会社をどう作るか
を考えます。

昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。