利益が出る工事なのに、なぜお金が減るのか|建設会社は「工事別の入出金予定」まで見ておきたい

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「この工事は、ちゃんと利益が出るはずなんです」

それなのに、預金残高を見るとお金が減っている。

建設会社では、こうしたことが珍しくありません。

赤字工事なら分かります。

ところが、工事台帳を確認しても粗利は確保できている。受注もある。今期全体でも利益は出る見込み。

それでも資金繰りが苦しくなることがあります。

なぜでしょうか。

理由の一つは、

「利益が出る時期」と「お金が動く時期」は同じではない

からです。

建設会社の経営管理では、工事の採算だけでなく、もう一つ、

「その工事で、いつお金が出て、いつお金が入ってくるのか」

を見る必要があります。

粗利1,000万円の工事でも、資金は先に減ることがある

例えば、5,000万円で受注した工事があるとします。

最終的な工事原価が4,000万円なら、見込粗利は1,000万円です。

数字だけを見れば、利益の出る工事です。

ところが、実際の工事では、

材料代を支払う。

外注費を支払う。

職人の給与を支払う。

現場経費も発生する。

こうした支払いが先に続く一方で、工事代金の請求や入金は後になることがあります。

例えば、

10月 材料・外注費など 800万円支払
11月 材料・外注費など 1,200万円支払
12月 材料・外注費など 1,000万円支払
1月 材料・外注費など 1,000万円支払
2月 工事代金 5,000万円入金

という工事ならどうでしょう。

最終的には、

受注5,000万円 − 原価4,000万円 = 粗利1,000万円

です。

しかし、2月に工事代金が入金されるまでに、会社は最大4,000万円を先に負担することになります。

しかも実際の会社では、この工事だけが動いているわけではありません。

A工事で800万円。

B工事で1,000万円。

C工事で600万円。

複数の現場で支払いが重なれば、

「仕事はある。利益も出る。でも、お金が足りない」

ということが起こります。

これが建設業の資金繰りを難しくする一つの理由です。

工事台帳だけでは見えないものがある

前回まで、受注残や工事の進捗から、

「今期、最終的にどのくらいの粗利・利益になりそうか」

を予測することについて書いてきました。

これは非常に重要です。

完成した工事の結果だけを見るのではなく、現在進行中の工事や受注残から、これから実現する利益を読む。

ここまでできれば、決算を待たずに今期の利益着地を考えられるようになります。

ただし、それだけではまだ足りません。

工事台帳から、

「この工事は最終的に1,000万円の粗利が出そうだ」

と分かっても、

「その1,000万円の利益を実現するまでに、会社がいくら資金を立て替えることになるのか」

までは分からないからです。

そこで必要になるのが、工事ごとの入出金予定です。

工事ごとに「金額」だけでなく「時期」を持つ

難しいことをする必要はありません。

まず確認したいのは、それぞれの工事について、

いつ支払いが発生するのか。
いつ請求できるのか。
いつ入金されるのか。

という時間軸です。

例えば、同じ粗利1,000万円の工事でも、

着工時に前受金が入る工事と、

材料費・外注費を何か月も先行して負担し、完成後にまとめて入金される工事とでは、

会社の資金負担はまったく違います。

つまり、

工事の採算と、工事の資金負担は別々に見る必要がある

ということです。

私が建設会社の経営管理を考えるときも、この二つは分けて考えています。

一つは、

この工事から、最終的にいくら粗利が残るのか。

もう一つは、

その粗利を得るまでに、いつ、いくらのお金が必要になるのか。

この二つがそろって、初めてその工事が会社経営に与える影響が見えてきます。

「受注できるか」だけでなく「受注して大丈夫か」を考える

この考え方は、受注前の判断にもつながります。

大きな工事を受注できる。

売上も増える。

粗利も確保できそうだ。

通常なら、喜ばしい話です。

しかし、その工事を進めるために多額の材料費や外注費を先に支払わなければならず、入金が数か月先ならどうでしょうか。

既存工事の支払いと重なることもあります。

給与、家賃、税金、借入返済など、工事以外の支払いもあります。

すると、

「利益が出る工事だから受注する」

だけでは判断できません。

その工事を受注したとき、

会社の資金がどのように動くのか。

ここまで見ておく必要があります。

これは「仕事を取らない方がいい」という話ではありません。

むしろ逆です。

資金負担が事前に分かっていれば、早く準備できます。

問題なのは、受注した後になって、

「思った以上にお金が出ていく」

「入金まで持たない」

と気づくことです。

利益予測の次は、資金予測へ

これまでこの連載では、

3年後にどんな会社を作りたいのかを考え、

そこから必要な人員、固定費、利益、粗利、売上を逆算してきました。

さらに、その必要粗利を今月の経営へ落とし、

実現粗利、確保粗利、未確保粗利を見ながら、

「あと、いくら受注する必要があるのか」

まで考えてきました。

そして前回は、現在の受注残や工事進捗から、今期の利益着地を読むところまで進みました。

ここから、もう一段進みます。

未来の利益が見えるようになったら、次は未来のお金を見る。

そのためには、

工事別採算
↓
受注残
↓
利益着地予測

で終わらせず、

工事ごとの入金予定・支払予定

へつなげる必要があります。

私はここが、建設会社の経営管理では非常に重要な境目だと考えています。

利益を予測できる会社から、

資金まで予測できる会社へ進む境目です。

最後に

これは建設業だけの話ではありません。

製造業でも、大きな材料仕入れが先行することがあります。

卸売業でも、仕入代金の支払いと売掛金の回収には時間差があります。

事業が成長するほど、売上や利益だけではなく、

「その利益を実現するまでに、いつ、いくらの資金が必要になるのか」

を見ることが重要になります。

経営計画というと、売上や利益の計画を思い浮かべがちです。

しかし会社を未来へ進めるには、

利益の未来と、資金の未来を両方見る必要があります。

建設業では、その出発点になるのが、一つひとつの工事の入金予定と支払予定です。

社長の会社では、現在動いている工事について、

「最終的にいくら儲かるか」だけでなく、「いつ一番お金が出ていくか」まで分かっているでしょうか。

ここが見えるようになると、資金繰りは「お金が足りなくなってから考えるもの」ではなくなっていきます。

次回予告

次回は、工事ごとの入金予定・支払予定を会社全体へ集約し、

「半年後、会社の預金はいくら残っているのか」

をどう予測するのか。

工事の入出金に、給与、固定費、税金、借入返済などを加え、6か月先の資金繰りを読む考え方について取り上げます。