なぜ社長のExcelと決算書は、いつまでも食い違うのか

建設業の経営者とお話ししていると、こんな言葉を本当によく耳にします。
「先生、うちでは毎月Excelで管理しているんです。」
実際にそのExcelを見せていただくと、決して適当に作られているわけではありません。
売上予定。
入金予定。
支払予定。
工事ごとの利益。
社長なりに工夫しながら、毎月数字を管理しています。
ところが決算になると、こんな言葉に変わります。
「先生、私のExcelでは利益が出ていたんですが……。」
税理士が作成した決算書を見ると、自分が考えていた利益と違う。
翌年はその反省を踏まえてExcelを修正する。
しかし翌年もまた決算書と食い違う。
私は、この場面を30年以上見続けてきました。
社長のExcelが間違っているわけではない
ここで誤解してほしくないことがあります。
社長のExcelが間違っているわけではありません。
現場を一番知っているのは社長です。
どの工事が順調なのか。
どの工事で利益が出そうなのか。
どこにリスクがあるのか。
その感覚は、誰よりも社長自身が持っています。
だからExcelで管理すること自体は、とても大切なことです。
では、なぜ決算書と一致しないのでしょうか。
決算書は「経営管理表」ではない
決算書は、社長が経営管理をするためだけに作られているものではありません。
企業会計のルール。
税法のルール。
建設業特有の会計処理。
こうした考え方に基づいて作成されます。
例えば建設業では、
・未成工事支出金
・完成工事未収入金
・工事進行基準
・決算整理仕訳
など、日々の経営感覚とは異なる処理が行われます。
つまり、
社長のExcelと決算書では、「数字を作る目的」が違うのです。
だから、完全に一致しないのは、ある意味当然とも言えます。
それでも社長は管理を続ける
ここが建設業経営の難しいところです。
社長は管理をやめません。
毎年Excelを改善します。
数字も見ています。
工事ごとの利益も確認しています。
それでも決算になると、
「また違った。」
「今年も何となく違う。」
という違和感が残ります。
そして、その理由までは分からない。
私は、多くの建設業経営者が、この状態で何年も経営を続けていると感じています。
私が目指したいこと
私は、この「何となく違う」を放置したくありません。
社長が現場感覚で管理している数字と、
決算書という会計上の数字。
この二つを少しずつ近づけていく。
それが、本当の意味での経営管理につながると考えています。
そして、その先には、
利益予測だけでなく、
資金繰り予測、
さらには金融機関との情報共有にもつながる管理体制があります。
私は、それこそが建設業の資金調達力強化につながる道だと考えています。
次回予告
では、決算書との違いを理解した上で、会社は何を目標に経営すればよいのでしょうか。
売上目標ではありません。
利益目標だけでもありません。
会社を維持し、利益を残し、将来の資金調達力を高めるためには、まず「年間で必ず確保しなければならない粗利額」を明確にする必要があります。
次回は、私が考える建設業の粗利経営の核心である「必達粗利目標」についてお話ししたいと思います。

昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。