利益が出ている工事なのに、なぜお金が減るのか?建設会社が知っておきたい「利益と現金」の時間差

「この工事は、ちゃんと利益が出ているはずなんだけどな」
工事台帳を確認しても、赤字工事ではない。
予定していた粗利も確保できそうです。
ところが、預金通帳を見るとお金が減っている。
建設会社では、こういうことが珍しくありません。
なぜでしょうか。
理由の一つは、工事の利益が出る時期と、実際にお金が出入りする時期が一致しないからです。
今回は、建設会社の経営を考えるうえで避けて通れない「利益と現金の時間差」について考えてみます。
粗利200万円の工事でも、途中では資金が減る
例えば、1,000万円で請け負った工事があるとします。
最終的な工事原価が800万円であれば、粗利は200万円です。
数字だけを見れば、きちんと利益が出る工事です。
しかし、工事が始まったからといって、1,000万円がすぐに入金されるわけではありません。
一方で、
材料を仕入れる。
外注先へ支払う。
現場で働く社員へ給与を支払う。
こうした支出は、工事の途中から次々と発生します。
例えば、着工後の早い段階で材料費300万円、外注費250万円、その他の原価100万円、合計650万円の支払いが発生したとします。
ところが、発注者からの入金は工事完成後。
この場合、会社は入金を受ける前に、650万円をいったん自分で用意しなければなりません。
最終的には粗利200万円が残る工事でも、その200万円を得るまでの途中では、会社から多額のお金が先に出ていくわけです。
これが、建設会社で起こる利益と現金の時間差です。
「利益が出る工事」と「資金的に楽な工事」は同じではない
ここで大切なのは、
利益が出る工事だからといって、資金的にも楽な工事とは限らない
ということです。
例えば同じ1,000万円の工事でも、
着手金を受け取れる工事。
出来高に応じて途中で入金される工事。
完成後にまとめて入金される工事。
では、会社が途中で負担する資金額がまったく違います。
反対に支払いについても、
材料を早い段階で一括購入するのか。
外注費を毎月支払うのか。
完成後に支払えるのか。
によって、資金の動きは変わります。
つまり、同じ粗利200万円の工事であっても、会社のお金に与える影響は同じではないのです。
工事別採算が分かっても、まだ経営管理は終わらない
これまでGリバースでは、3年後の会社像から必要粗利を逆算し、それを今月の経営へ落とすところまで考えてきました。
しかし、粗利が予定通り確保できても、それだけで資金が足りるとは限りません。
建設会社では、工事期間が長くなることがあります。
原価の発生と請求の時期も一致しません。
請求してから実際に入金されるまでにも時間があります。
そのため、
「この工事でいくら儲かるのか」
と、
「その利益を得るまでに、いくら資金を先に負担するのか」
は、分けて考える必要があります。
工事別採算が見えるようになったら、次に見るべきなのは、この「時間差」です。
黒字なのにお金が減るのは、おかしなことではない
試算表では利益が出ている。
工事台帳を見ても粗利は確保できている。
それなのに預金残高が減っている。
こうなると、
「何か数字がおかしいのではないか」
と感じる社長もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
建設業では、利益が現金になるまでに時間がかかります。
特に工事が進むにつれて材料費や外注費などの支払いが先行する場合、一時的に預金が減ること自体は不自然ではありません。
問題は、預金が減ることそのものではありません。
なぜ減っているのかを説明できるかどうかです。
「この工事は最終的に200万円の粗利が出る。ただし、入金までに最大650万円程度を会社が先に負担する」
ここまで分かれば、工事の見え方はかなり変わります。
単に「儲かる工事かどうか」だけではなく、
利益と現金の両方から工事を見る
ことができるようになるからです。
そして、もう一つの問題が出てくる
一つの工事だけなら、資金の動きも比較的把握しやすいでしょう。
では、こうした工事が同じ時期に何件も動き始めたらどうなるでしょうか。
一件一件は黒字工事です。
会社全体としても売上は増えています。
それでも、資金が苦しくなることがあります。
なぜ、仕事が増えているのにお金が足りなくなるのでしょうか。
これは建設会社が成長するときに、非常に重要な問題になります。
この点については、次回詳しく考えていきます。
最後に
今回は建設業を例にしましたが、利益と現金の動く時期が一致しない問題は、建設会社だけのものではありません。
製造業でも、材料を仕入れて製品を作り、販売代金を回収するまでには時間があります。
卸売業でも、仕入代金の支払いと売掛金の回収には時間差があります。
会社経営では、利益を出すことはもちろん重要です。
しかし、利益が出るまでの間、お金がどのように動くのかを見ることも同じくらい重要です。
特に建設業は、一件当たりの工事金額が大きく、工期も長くなりやすいため、この時間差が経営に与える影響も大きくなります。
「利益が出ているから大丈夫」
だけではなく、
「その利益が現金になるまで、会社はいくらのお金を支える必要があるのか」
ここまで見ることが、建設会社の経営管理をもう一段深めることにつながります。
次回予告
「受注が増えた会社ほど、なぜ資金が苦しくなることがあるのか」
一件一件は利益の出る工事なのに、受注が増えるほど資金繰りが苦しくなる。
次回は、受注残を「将来の売上」だけでなく、「これから必要になる資金」という視点から考えます。

昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。