『決算書の簡易セルフチェックの方法』 …財務目線=金融機関目線で自社の決算書を確認してみましょう。

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金融機関は「決算書」を拠り所に融資審査を行います。中小企
業の場合、税理士事務所が税務目線で作ることが多い決算書で
すが、金融機関は税務署ではありませんので、「税金が正しく
計算されているか。」ではなく、「貸したお金が本当に返って
くるか。」という目線で見ています。よって、税務上は正しい
決算書であっても、提出された決算書をそのまま分析するので
はなく財務の目線で修正しています。

下記にセルフチェックの手順をご紹介します。すべての金融機
関が必ず下記の手順で診断している訳ではありませんが、基本
的な考え方としてご了承願います。

1.損益計算書の修正および診断

◆ 減価償却不足を修正します。
減価償却の未計上は税務上問題ありませんが、利益が正しく計
上されないため、財務上は必ず計上します。よって減価償却不
足がある場合、「税引き後利益-償却不足額」で利益修正を行
います。

◆ 役員報酬を修正します。
役員報酬を減らして利益を大きく計上するなど、役員報酬は利
益の調整弁になりやすい項目です。役員報酬額を過小に計上し
ている場合は、「最低限必要な生活費(※360万円程度)-
役員報酬額」を税引き後利益から差し引きます。反対に社会通
念上過大と考えられる役員報酬を得ている場合は、「役員報酬
額-生活に必要な生活費(※800万円程度)」を税引き後利
益に加算します。
※金額はイメージしやすいように例示したものです。あくまで
も参考程度とお考えください。

2.返済能力の診断(診断その1)
修正後の損益計算書を基に返済能力を診断します。企業の返済
能力は、「修正後の税引き後利益+減価償却費」で求められま
す。この値がプラスであれば第1段階の診断はクリアです。マ
イナスであればプロパー融資を受けるのは難しくなります。

3.適正借入額の診断(診断その2)
返済能力を確認したら、次は借入額が返済能力に見合っている
かを診断します。「(金融機関からの借入額-現預金)÷(税
引き後利益+減価償却費)」で求められる値が「10」未満で
あれば、新たな借入の可能性はありと判断出来ます。10以上
となった場合は、新たな借入は難しいと考えられますが、正式
な算式はさらに細かいものになりますので個別でお問い合わせ
ください。

4.貸借対照表の修正および診断

◆ 不良資産の修正
資産の中から、実際は価値の無い資産を減算していきます。例
えば、回収不能な売掛金や貸付金、不良在庫、使途不明な仮払
金などは減算の対象です。販売先が破産を申し立てた場合、税
務上は破産手続きが完了するまで資産に計上しておかなくては
なりませんが、実態は回収見込みが薄いため、財務上は減算し
なくてはなりません。

◆ 返済不要な負債の修正
社長個人からの借入金など、差し迫って返済が不要なものは負
債から減らすことが出来ます。

5.安全性の診断(診断その3)
倒産しにくい会社かどうかを、「自己資本」で判断します。こ
の場合も、修正後の貸借対照表を基に、「修正後の資産-修正
後の負債」で自己資本を算出します。損益計算書の診断結果が
良好で、この値もプラスであれば融資を受けられる可能性はさ
らに高くなります。

以上、貴社の診断結果はいかがだったでしょうか。ひとつでも
クリアできていない項目があれば財務面に問題を抱えているこ
とになりますので、お早めにご相談ください。