経営規模等評価の評点アップ対策

1. 経審改正の背景と目的
経営事項審査(経審)は、建設業者の健全な経営や社会的信頼性を評価する制度であり、社会の変化や政策目標(働き方改革、脱炭素化、人材確保など)に合わせて改正が行われています。平成20年の大改正以降、社会保険加入促進、若手育成、災害対応、環境配慮など、建設業の社会的責任を重視する方向に進化しています。
2. 経審の構成と評点算出の仕組み
経審は「経営規模等」と「経営状況」に大別されます。経営規模等(X・Z・W)は、完成工事高、自己資本額、技術職員数、社会性などを評価し、経営状況(Y)は決算書をもとに財務指標8項目で分析します。特に「その他の審査項目(W)」は22項目に細分され、労働環境、教育、環境、社会貢献などを多面的に評価。素点×0.875×0.15によりP点(総合評定値)へ換算されます。
3. 主な改正点(令和5年以降)
- ① ワーク・ライフ・バランスの取組
- 「えるぼし」「くるみん」「ユースエール」などの認定取得が加点対象。複数認定しても最も高得点の1つのみ評価。
- ② 建設機械の加点拡大
- 災害対応で重要なダンプ、高所作業車などが新たに加点対象。1年7か月超のリース契約でも保有と同様に扱われます。
- ③ 環境配慮の評価強化
- ISO14001に加え、「エコアクション21」も評価対象に追加。中小企業にとって点数は小さいが、社会的評価としての価値は高い。
- ④ 建設キャリアアップ制度(CCUS)の評価化
- 元請現場でCCUS端末を設置し、技能者カードで就業履歴を記録した場合に加点。全現場導入でP点換算約20点。技能継承と人材確保を促進。
4. 評点アップの方向性(経営戦略への活用)
経審は「規模」中心から「質」中心へと移行しています。今後は以下の要素が総合評定値を左右する主要因となります:
- ・技能者の育成・定着
- ・働きやすい職場づくり(ワークライフバランス)
- ・災害対応力・保有機械の充実
- ・環境・社会的責任への取組
これらを経営戦略の一部として取り入れることで、入札競争力と持続的な経営基盤の両立が可能になります。
5. P点換算例(参考)
評価項目 | 加点条件 | P点換算(目安) |
ワーク・ライフ・バランス | えるぼし認定 第3段階 | 約5点 |
建設機械保有 | ダンプ・高所作業車等を保有 | 約6点 |
環境配慮 | ISO14001 + エコアクション21 | 約13点 |
CCUS導入 | 全現場で端末設置・就業履歴登録 | 約20点 |

昭和63年、中央大学商学部卒。
その後、大手ゼネコン勤務等を経て、平成7年、石田雄二税理士事務所開業。
「会計事務所は最も身近な経営スクール」をモットーとし、マネジメントゲームを用いた経営指導は県外にまで及ぶ。
広島県創業サポーター。広島県事業引継ぎ支援センター登録専門家。